A:妖光の斑蛇 ユラン
サベネア島のアウラ族たちの古い言葉で、蛇を意味する「ユラン」と呼ばれる存在を倒してきてくれ。医学部からの依頼で、その死骸を調達したいんだよ。聞くところによれば、こいつは特殊な発光器官を備えていて、魔力を込めた光を発し、捕食行動に利用するそうでな。その光に当たると小さく圧縮され、丸呑みにされちまうんだとか。ああ、それから念の為に補足しておこう。名前が蛇を意味すると伝えたが、こいつは蛇じゃない。四脚歩行する巨大両生類で、けばけばしい体表を持つそうだぞ。
~ギルドシップの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
サベネアは先住民であるマタンガ族と後に渡来してきたヒューラン族とアウラ族が協力して作り上げた都市国家だ。それがどのくらい前の話なのか定かではないが古代アウラ語で名付けられた生き物がいる事からも渡来してきたアウラたちがまだ古代アウラ語を使用していた時代と推測されている。
その古代アウラ語で「ユラン(蛇)」と名付けられた生物がサベネアにいる。大きく分類するとサンショウウオの仲間に当たるのだが非常に稀少な生物でありながらサベネアの昔話にもちょくちょく登場するほどよく知られた生物だ。
ユランの体長は7~10m、真っ赤な体に苔のような緑色の斑点があり毒々しい。顔からは先端が丸くなったマラカスのような物が2つ飛び出している。これは元々眼球だったらしいのだが自らの発する魔力を帯びた光線から身を護るために眼球は退化したと言われている。このユランの発する光線こそがこの生物を危険だという理由に他ならない。この光線が生物の目に当たるとその生物の体は小さく圧縮される。所謂ミニマムという魔法の効果を帯びている。そしてユランは小さくなった獲物を大きな口で丸呑みにしてしまうのだ。
「ユランに関する昔話」
昔々、サベネア島の密林に小さくて真っ赤なサンショウウオが棲んでいました。サンショウウオは身体がヌメヌメしていて柔らかく、小さくて動きも遅いので見つかるとすぐ他の生き物に食べられてしまいます。普段は葉っぱの陰や岩の下で見つからないようにひっそりと暮らしていました。
しかし、どうしたってお腹は空いてしまいます。そういう時は仲間同士大勢集まって牙のない小さな口で一飲みにできるような虫などを採りに出かけますが、真っ赤なサンショウウオはジャングルでもとても目立つので表に出るとすぐに鳥やトカゲなどの様々な生き物に見つかり次々と食べられてしまい、無事に戻ってこられるのは出かけた大勢の内の1/3くらいでした。
飢えて死ぬのか、食べられて死ぬのか、その二つの道しかないこのサンショウウオをサベネアの神々は大変不憫に思っていました。
ある時お腹を空かせたサンショウウオたちがまた決死の食べ物集めに出かけようと河原に集まりましたが、集まったのは僅かに数匹でした。食べ物集めに出かける度にいろんな生物に食べられてしまって、食べ物集めに行ける大人のサンショウウオは残っていなかったのです。いよいよ絶滅を覚悟したサンショウウオでしたが、そんなサンショウウオたちの前にサベネアの神様が現れました。そして神様は言いました。
「動きが遅く、牙もなく、爪もない。身を護る堅い皮膚もない。我々はお前たちをひ弱に作り過ぎてしまったようだ。あまりに不憫なお前たちに生きていくための力を授けよう」
神様はそう言って持っていた杖を振りました。するとサンショウウオの体に変化が起きました。飛び出ていた目玉はなくなり丸い玉になり目が見えなくなりました。その代わり目がなくても不自由しない程耳が良くなりました。
「良いか、お前たちに魔法の光を与えた。何かの時は念じるがいい」
そういうと神様は姿を消しました。
こうしてサンショウウオは襲ってくる相手や獲物を小さくする光を発する力を会得しました。小さくすればどんな獲物も口に収まり、丸呑みすることが出来るようになりました。
そしてその能力を授かったことで、いままで他の生物に食べられたために1年くらいしか生きられなかったサンショウウオたちは、本当は自分たちが何年も何年も生きられる生物であったことを知りました。
寿命が長くなり、食べ物に困らないことで本当は何倍も何百倍も大きな体に成長できる生物だった事を知りました。
そして何の武器ももたないためにジャングルで一番弱かったサンショウウオたちは、いつしかこのジャングルで一番強い生物になりました。人間たちはいつしかサンショウウオたちを恐れるようになり、特に海の向こうから来た角のある人間たちは、この巨大でヌメヌメした全てを丸呑みする恐ろしい生き物を自分たちの故郷に伝わるすべてを丸呑みする恐ろしい生物の名前で「ユラン(蛇)」と名付け、呼ぶようになりました。